田嶋悦子《Records》2017年 撮影=斎城卓
陶とガラスを素材に生命感あふれる表現を生み出す美術家、田嶋悦子の個展を開催します。
田嶋悦子は1959年大阪市に生まれ、1981年大阪芸術大学工芸学科陶芸専攻を卒業。「YES ART」や「アート・ナウ」など、関西の若手の現代美術家によるグループ展に、陶による巨大なインスタレーションを発表し、注目を集めました。しかし1990年代に入ると、それまでの装飾的な要素を一切削ぎ落としたミニマルな作風へと移行。その後、陶とガラスを接合したのびやかな形状のオブジェクトー《Cornucopia》シリーズを生み出します。そして、このシリーズで確立した独自の造形手法が高く評価され、現在、国内外の多くの美術館に作品が収蔵されています。
一方で、田嶋悦子は1980年代から一貫して、展示空間を構成するインスタレーションと呼ばれる美術表現に関心を向けてきました。それは、ただ個別の作品として存在するだけにとどまらない陶表現のあり方を探求する試みです。熱帯の花や樹木を思わせる巨大な陶作品をならべた初期の《Hip Island》、群生する花々が一斉に地表から伸び上がっているかのような近年の《Flowers》からは、作品が持つ生命感を周囲の空間に押し広げようとする強い意志が感じられます。また、新作のインスタレーション《Records》では、粘土という素材を、存在、時間、行為、感情などを転写し、記録するメディウムとして新たにとらえ直そうとしています。
陶の持つ独自性を生かしつつ、美術表現としてどのような可能性を切り開くことができるのか。本展では、田嶋作品の造形的特徴を示す《Cornucopia》シリーズのほか、1980年代から新作までのインスタレーションを中心に約15点を展示し、陶芸の新たな地平を目指す田嶋悦子の挑戦に迫ります。
- 主 催
- 西宮市大谷記念美術館
- 後 援
- 西宮市、西宮市教育委員会
<同時開催>
生誕120年 伊藤慶之助展